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初めて見積もりを作ったんだけど、前提条件をちゃんと書けって上司に言われちゃった。前提条件ってそんなに大切なの?金額の方が重要じゃない?
チャーチルさん
ポン先生
前提条件も揃ってないと見積もりとしては不十分だよ!今日は金額以外で見積もりの重要なポイントを勉強しよう。
作業費用は感覚が大きくズレていなければそれらしき金額で出すことはできます。一方金額以外の部分は注目していますか?見積もりでは金額以外のポイントで揉めたり認識の齟齬が発生する事があります。この記事では作業費用提示における注意点やポイントを紹介します。見積もりからキッチリ仕上げることでSIer側、顧客側双方納得して案件を推進することができます。
見積もりの金額に関してはこちらの記事を参照。
HAL校長
目次
結論:見積もりの注意点/ポイント
最初にこの記事の結論を挙げておきます。
- 前提条件はしっかり書く → メリット3つ
- 必要あれば複数パターン提示 → 失注の回避
- 明細をどこまで出すか → フォーマットによってはフォローが必要
前提条件はしっかり書く → メリット3つ
見積は金額だけでなく、SIerの作業内容やその前提条件が記載されます。この前提条件は面倒ですが必ずしっかり書いておきましょう。前提条件の記載には下記のメリットがあります。
-
作業費用の根拠を説明しやすくなる
-
顧客側、SIer側それぞれのタスクが明確になる
-
後々のトラブルを回避できる
作業費用の根拠を説明しやすくなる
例えばスイッチのリプレイス作業の見積もりが100万円でSIerから提示されました。具体的な作業内容について一切の説明がなく、金額だけの提示だけだったらどうでしょう?顧客担当者から見て高いか安いかも判断ができないです。むしろ感覚だけの話になるので高いと感じているでしょう。
一方、見積書に以下のように記載してあったらどうでしょうか。
- 切り替え時のリスクを軽減するため2回に分けて作業を実施します。
- 1回目:新スイッチを接続後、一部通信のみ転送し問題ないか1週間経過観察
- 2回目:既存スイッチをシャットダウン、新スイッチへ完全に切り替え
- 下記管理資料は新規作成致します。
- ネットワーク構成図
- ポート管理表
- ラック構成図
- 事前に社内でセッティングし、検証を実施致します。
- 作成資料:検証計画書/結果報告書
金額そのものが高いか安いかは別としても一旦、金額⇔作業内容が紐付きました。顧客担当者側もこれを基に見積もりの精査ができますし、SIer側も『これだけの作業をやるのでこの金額がかかります』と、説明することができます。
見積もりのポイントは金額自体の高い安いでなく互いに納得し合意できるかどうかです。
材料さえ揃っていれば顧客担当者も社内で上司に説明できます。どうしても費用削減したければ、例えば、〇〇の作業項目を削って良いので××万円下げて欲しいと言った交渉もできます。いずれにしても納得感のある見積もりにするために、金額だけでなく作業内容や前提条件はしっかり書きましょう。
顧客側、SIer側それぞれのタスクが明確になる
上記の話とも関連しますが、見積もりの役割として作業範疇の明確化があります。つまり『この案件においてSIer側は〇〇~✕✕まで対応します』と線引きをすることです。案件対応は全てSIerにお任せてしておけば良い感じに勝手にやってくれる・・・という訳ではありません。もちろんSIer側が積極的に動くべきではありますが、顧客側の対応/協力も必須です。
そこで、見積もりの前提条件には顧客側に依頼したい事(=SIer側でやらない事)を明記しておくと分かりやすくなります。顧客側タスクとSIer側タスクが明確化されることでスムーズな案件推進につながるのです。
また、これはSIer側の作業範疇の明確化と共に、
このタスクはSIer側ではやらない
↓
その分の金額はこの見積もりには含まれていない
↓
もしSIer側に依頼する場合は別途費用が必要
と理解してもらう意味合いも含まれています。具体的には下記のような記載イメージです。
- 作業対象の既存スイッチのconfigは事前に貴社から提供頂く事を想定しております。
- 対向機器のファイアウォールの作業は本見積もりには含まれておりません。
- その他、本見積もりに記載のない作業に関しては別途お見積りとさせて頂きます。
少し冷たく見えるかもしれませんが、決して無下に断っているのではなく、『こうゆう状態であれば作業できますよ』、『このタスクは顧客側へお願いしたいですよ』という重要な意思表示なので漏らさず対応していきたいポイントです!
ポン先生
費用的な意味合いで見積もりに含まれていないという事もあるけど、そもそもSIer側では絶対にできないから顧客側で対応お願いします~な意味で書く事もあるね。兎にも角にもまずは、やること・やらないことを明確にすることが重要だね!
後々のトラブルを回避できる
なるべくは避けたい所ですが、案件が始まった後で揉めるケースも残念ながらあります。。。ありがちなケースとしては認識の齟齬です。
- 顧客側:A・B・Cの作業までやってもらえると思っていた
- SIer側:A・Bの作業しか見込んでいない
と言ったようなケースです。宙に浮いたCの作業はどうするの?ということで揉める展開ですね。
これも見積もりの前提条件をしっかり記載すればある程度防止できる事案です。最初から前提条件として『本作業では作業A・Bのみ対応致します。』と書いてあり顧客側もそれに同意していれば揉めることも少なくなります。
とは言え、そもそも作業Cは完全に考慮漏れで顧客側・SIer側共に見込んでいなかったケースもあり得ます。しかし、前提条件の書き方次第で状況は変わります。
■パターン①前提条件が曖昧
→顧客はSIerが作業Cを対応する認識
→SIerがちゃんとやれ!と指摘(関係がギスギスする)
■パターン②前提条件に作業A,B以外は範疇外である事が明記
→顧客はSIerの範疇に作業Cは含まれていない事を認識
→その上で作業CについてSIerに相談(あくまで相談ベース)
結局両方ともSIerに作業Cの話が来ることに変わりはないですが、パターン①②ではニュアンスが全然違います。①はどちらか言うと顧客はお怒りモードで、顧客との関係悪化に繋がる可能性すらあります。②は申し訳ないのですが検討可能ですか?・・・なモードで、内容によっては追加費用のチャンスです。
このように前提条件を記載することで顧客との揉め事を完全に0にする事は難しいですが少なくはできます。揉め事は案件の品質低下・スケジュールの遅延・顧客との関係悪化と良いことが無く、自身を守る意味でも前提条件はしっかり詰めておきましょう。
ポン先生
中には前提条件無視でクレームを入れて来る顧客もいるし、作業Cを見落としたSIer側にも非はあるから、絶対に問題無しという訳ではないけどね。
必要あれば複数パターン提示 → 失注の回避
認識齟齬には失注のリスク有り
見積もりのやり取りにおいて、顧客側とSIer側で認識の齟齬が生まれる場合があります。その結果失注に繋がるケースもあります。例えば
SIer:この作業項目は不要かもだけどひとまず入れておこう。不要なら教えてくれるだろう。
↓
顧客:このSIerはやたら作業が多くて高額だな。良く分からないけど他の会社にお願いしよう。
↓
失注
といったケースです。
この場合、本来は不要な作業項目が入っておりその分を抜けば受注できたかもしれませんし、全部入りでも費用が安ければ受注できていたかもしれません。
もちろん要件は事前に確認すべきですが、内容によってはその項目が必要かどうか顧客側で判断できない場合もありますし、最終的には金額次第かもしれません。
複数パターンの見積もりで失注を回避
ではどうするべきでしょうか?それは見積もりを複数パターン出すことです。
具体的には全部入りパターンと最小限パターンに分けて見積もりを出すことで顧客側に選択肢を提示します。こうすることで、顧客側には以下のようなメリットがあります。
- 最小限必要なものが何なのか把握できる
- 内容と費用の比較ができる
また、いずれかのパターンで顧客側の関心があれば詳細の問い合わせがあるかもしれませんし、SIerとしても失注による機会損失を回避できるかもしれません。
一番もったいないのは、1パターンの見積もりしかないと、『絶対にこの内容でしか作業できない』と顧客に誤解されてしまうことです。見積もりは、この条件だったらこの金額です、と言っているだけあって、項目のカスタマイズなんていくらでも可能です。
選択肢はあるよ~、調整はできるよ~、という趣旨を顧客に伝える意味でも必要に応じて複数パターンの見積もりを準備しましょう。
ポン先生
一般的には松竹梅で3パターンあると心理的に真ん中の竹を選びやすいなんて言われているね。実際の見積もり内容も
・松→全部入り豪華パターン
・竹→SIerオススメの現実的なパターン
・竹→本当にミニマムなパターン
としておくと、より竹が真っ当な選択肢に見えるし誘導しやすいね。テクニックの1つとして覚えておこう。
明細をどこまで出すか → フォーマットによってはフォローが必要
規模にもよりますが顧客担当者は大抵複数のSIerとやり取りしており各社の見積もりを確認しています。実際に色々な会社の見積もりを見ると分かりますが、『見積もりの明細をどこまで出すか』という点に関しては会社毎に全く異なります。
その度合によって印象が違うのはもちろん、発注のスピードや可否に影響が出るケースさえあります。しかし、通常見積もりのフォーマットは会社毎に決まっており、個人の裁量でどうにかする話ではないですが、顧客担当者目線ではどのように見えているか知っておいて欲しい内容です。
これは具体例を見た方が分かりやすいので早速紹介していきます。
全明細開示パターン
上記の通り全ての明細を顧客に開示するフォーマットです。それぞれの単価や工数、計算方法が全て分かり明朗会計です。顧客側としても全ての情報があるのでチェックしやすい格好になっています。
一方、情報が見え過ぎていることでデメリットもあり、例えば少し経験のある顧客担当者からすると、『そんなに工数かからないだろう?』だとか、『単価高すぎない?』と言ったツッコミが入る場合もあるので一長一短です。
上位のように全明細を出している会社も一部ありますが、個人的にはそこまで多くない印象です。
一部開示パターン
全明細ではなく、一部の明細だけを開示するフォーマットです。例えば上記は大項目毎の金額までを見せるパターンですが、小項目までの金額は見せるパターンや、単価は見せないが工数までは見せるパターン等様々です。
会社によって粒度の違いはありますが、現実的には一番多いパターンです。SIer側としては単価や細かい計算方法等はあまり公にしたくない心情もあるので見せる所は見せ、隠す所は隠すという形でやりくりしています。
合計金額のみパターン
極端ですが、合計金額のみというフォーマットもあります。これはSIer側が情報を開示しない方針という可能性もありますが、場合によっては見積もりシステムの仕様でそのようなフォーマットになっている等の別要因の可能性もあります。
妥当な金額であればまだ良いですが、大規模案件や予算オーバしている場合、顧客側も判断が難しいですし何より不透明感は出てしまいます。場合によっては別資料の提示や見積もり内容の説明が個別に必要になる事もあるのでその点は覚えておきましょう。
このように同じ金額であっても見積もりのフォーマット次第では顧客に与える印象も違いますし、場合によっては発注の判断スピードや結果が分かれるケースもあります。もちろん会社で決まっているフォーマットを個人では変えられないものの、各SIerの見積もりを見ている顧客担当者目線でどのように感じるかは一度考えてみましょう。
ポン先生
見積もりのフォーマット自体は変えられなくても、別で説明したり資料を作ったりして、“見積もりの妥当性”を納得してもらうことが重要だね。
まとめ
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前提条件はしっかり書く → メリット3つ
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作業費用の根拠を説明しやすくなる
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顧客側、SIer側それぞれのタスクが明確になる
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後々のトラブルを回避できる
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必要あれば複数パターン提示 → 失注の回避
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複数パターン出すことで顧客側が
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最小限必要なものが何なのか把握できる
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内容と費用の比較ができる
→作業項目や費用の調整ができると認識しすぐに失注とはならなくなる
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明細をどこまで出すか → フォーマットによってはフォローが必要
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全明細開示パターン(あまり無い)
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一部開示パターン(一番多いパターン)
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合計金額のみパターン(あまりにも情報が少ないので追加説明が必要)
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見積もりの作成は営業活動です。例え1時間であってもエンジニアが稼働しているのであれば会社の収支としてはマイナスです。もちろん受注できればその分で取り戻せば良いですが、見積もりが甘いが故に受注後に揉めて赤字になった、そもそも失注し無駄になった、という事ではもったいないです。少し見積もりの書き方を工夫すれば防げる内容もあるので、面倒かもしれませんが金額以外の内容もしっかり仕上げて行きましょう。